感情に抵抗すると、なぜ苦しくなるのか|レイキ研究ノート第001号・前編
「考えすぎをやめたい」
「この不安を、どうにかしたい」
「もう気にしないと決めたのに、また同じことを考えている」
そんな経験はありませんか?実は、私も長い間、そうでした。自分の心を理解したくて、仏教を学び、瞑想も実践してきました。
感情は自然に生まれるもの。すべては移り変わるもの。執着を手放すことが、苦しみから自由になる道。理屈では、とてもよく理解できました。それなのに、気づけばまた同じことを考えている。
不安に飲み込まれてしまうと、感情を観察することさえ難しい。
「頭ではわかっているのに、どうして変われないんだろう?」
そんな私が、日本伝統式レイキと出会い、ある体験をしました。今日は、感情が生まれる仕組みと、仏教や心理学の視点、そして私自身がレイキを通して知った「手放す」ということについて、お話ししたいと思います。
1. そもそも、感情は悪いものではない
怒り、不安、悲しみ、嫉妬、恐怖。私たちは、こうした感情をつい「なくしたいもの」と考えます。でも、感情は本来、敵ではありません。
例えば、誰かに理不尽なことを言われたとき。瞬間的に腹が立つのは、ごく自然な反応です。不安も同じです。
まだ起きていない未来を心配するのは、自分を危険から守ろうとする働きと関係しています。感情は、身体の状態、過去の経験、そのときの状況、物事の受け取り方など、さまざまな条件が重なって生まれます。仏教の「縁起」という考え方にも通じるところがあります。
感情は、私たちが意志の力だけで自由に出したり消したりできるものではないのです。そして、感情には変化する性質があります。怒りが強くなることもあれば、弱くなることもある。
不安が長く続くこともあれば、いつの間にか落ち着いていることもある。
感情が湧くこと自体は、決して悪いことではありません。
では、なぜ私たちは、その感情にこれほど苦しめられるのでしょうか。
2. 苦しみを大きくしているのは、感情への「抵抗」かもしれない
例えば、誰かに批判されて腹が立ったとします。最初に湧いたのは、怒り。ところが、次の瞬間にはこんな考えが始まります。
「なんであんなことを言われなきゃいけないの?」「絶対に許せない!」あるいは反対に、
「こんなことで怒る私は未熟だ」「もっと穏やかな人間にならなければ」怒りに対して、さらに怒ったり、自分を責めたりする。
そうすると、最初の出来事以上に、頭の中で苦しみが膨らんでいきます。
仏教が説く「第二の矢」
初期仏教の経典『サッラッタ経』(相応部36.6)には、「二本の矢」のたとえがあります。身体的な苦痛を受けたとき、その苦痛に抵抗し、さらに精神的な苦しみを重ねてしまう。まるで一本目の矢に続いて、二本目の矢まで受けてしまうようなものです。
これはもともと身体的苦痛を例にした教えですが、日常の感情にも応用して考えられます。「不安になった」という最初の反応に対して、「不安になってはいけない」「早く消さなければ」と抵抗する。その抵抗が、さらに自分を苦しめてしまうことがあるのです。
つまり、
感情そのものの苦しさと、感情に抵抗することで生まれる苦しさは、分けて考えることができる。
ここに気づくことが、感情との付き合い方を変える第一歩になります。

3. ホーキンズが説く「感情エネルギーの手放し」
精神科医であり、意識の探究者でもあったデヴィッド・R・ホーキンズは、著書『「手放し」のすすめ』で、感情に抵抗せず、そこにあることを許すという実践を紹介しています。ホーキンズは、抑圧された感情を、内側に蓄積された圧力のように捉えました。そして、その圧力が思考や行動に影響を与えると考えたのです。
私には、この説明がとてもしっくりきました。例えば、ずっと我慢していた人が、ほんの些細な一言で突然怒り出してしまう。自分では気にしていないつもりだった出来事を、何年経っても繰り返し思い出してしまう。
そうした経験はないでしょうか。心理学の研究でも、感情を表に出さないよう抑える行為が、必ずしも主観的な感情を弱めるわけではなく、状況によっては身体のストレス反応を高めることが示されています。ただし、ここは区別が必要です。
ホーキンズのいう「感情エネルギーの蓄積」は、感情が物理的なエネルギーとして身体のどこかに保存されることを科学的に証明した説明ではありません。私はこれを、抑え込んだ感情が、心身の反応や繰り返される思考として現れることを理解するための、一つの見方として捉えています。大切なのは、感情を無理に押し込める以外の選択肢があるということ。
怒りがあってもいい。不安があってもいい。悲しくても、嫉妬してもいい。
その感情が今ここにあることを、まず認めてみる。それが、手放しの入口になるのだと思います。

足立みずほ|日本伝統式レイキ師範
灯-TOMORI-日本の「道」の精神で、癒しを探究する。灯-TOMORI- 公式サイト
参考資料
- デヴィッド・R・ホーキンズ『「手放し」のすすめ』(原著 Letting Go: The Pathway of Surrender、Veritas Publishing, 2012)
- 『サッラッタ経』相応部36.6(SN 36.6) 英訳資料
- Gross, J. J., & Levenson, R. W. (1993). Emotional suppression: Physiology, self-report, and expressive behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 64(6), 970–986. 論文情報
- 厚生労働省eJIM「レイキ」 科学的根拠と安全性に関する情報
※この記事は、筆者自身の体験・仏教や思想の解釈・研究知見を区別しながら紹介するものです。レイキによる特定の疾患や症状の治療効果は確立されておらず、医療や心理的支援の代替ではありません。心身のつらさが続く場合は、専門家にご相談ください。